なりたくなんかないけどさ
最後の日が明確に決まって、残り半年のカウントダウンが始まった。
半年後には、もう全部が終わってる。
推しは目まぐるしく活動してる。
毎週のようにライブをして、隙間を縫って配信をして、自分だけのイベントを複数立てて。
最初はやりたいことをやり切って未練をゼロにしようとしてるのかな、なんて思っていた。
だけどアイドルに未練はないそうだ。
とにかくイベントを立てているのは、みんなに会う時間を1秒でも増やすため。
アイドルとしての自分がみんなに会うには、イベントという媒体が必要だから、って。
すごくすごく優しくて、すごくすごく残酷だ。
誇らしいほど嬉しいのに、悲しくてどうにかなりそうだ。
アイドルとオタクの関係性は、経済の一環としてあるべきだ。それが健全な位置関係だ。
まるで友人みたいな距離感にいてくれていたから忘れていたけど、半年後にはいくらお金を払っても会えない存在になるんだ。
あなたのおかげで好きになった音楽を、あなたがいなくなったあとにきけるだろうか。
あなたを追いかけて訪れた初めての場所へ、あなたがいなくなったあとに足を向けられるだろうか。
あなたのおかげで身に纏うようになった色を、あなたがいなくなったあとに着れるだろうか。
気づけばすっかり依存している。
あなたがいないとだめな私になってしまった。
そんなの、きっと喜ばないのに。
でも、きっと絶対、とにかく声が聞きたくなるし、踊りを見たくなるし、聞いてほしいって思う話だってたくさん出てくると思う。
半年後、その直後はきっと悲しむのに忙しい。
問題はそのあとだ。
私は怪物にならないでいれるかなあ。